01 02 03 04
05 06
(でも……)
──収まらない。
大事な部分の疼きは、未だにちっとも収まっていない。
徹底して焦らすつもりなのか、
ヨリコはあれから一度もそこには触れてくれなかった。
すでに全身は白泡で包まれ、後はシャワーで流せば終わりである。
ご丁寧なことに、頼子は羽根や尻尾まで泡で擦ってくれた。
湯を浴びて泡を流せば、本当にさっぱりスッキリ、キレイな身体になれるだろう。
しかし──
(うあああ、マジでじんじんするしぃっ……)
今はそれよりも、この疼きを本当にどうにかして欲しかった。
手が動かせない事が、とてももどかしくて、切ない──
一体、いつまで焦らすのだろう。
確かに、いじめてほしいとは言った。
だが、リリカの望んでいた『いじめ』と、
頼子が今している『いじめ』とでは、その意味が大きく異なっていた。
いじめてほしいけど、いじめて欲しくない。
こんな風にいじめるのを早くやめて、早く……早くいじめて欲しい。
──もしかしたら、ヨリコは潜在的には『S』なのかもしれない。
──そして、今の自分は、おそらくその逆……
(おそらく?……何言ってんの、アタシ?
……どう考えたって、もう間違いないじゃん……)
そんな、普段の自分からは考えられないような被虐的な思考が、生まれる。
今までの、ヨリコによるキスや愛撫、抱擁。激しい蹂躙。
そして、焦らしという名の『いじめ』──
リリカはそれらによって少しずつ、
マゾヒスティックな悦びの種を、
その身体中に植え付けられていった。
☆
頼子の手が、リリカの身体にまわされる。
──ぎゅっ!
「ひああん!」
──ビクゥン!
突然後ろから抱きつかれて、所々の神経が小さく悲鳴を上げた。
「あう、んんん……ちょっ、ヨリコ……?」
「ん、リリカぁ……可愛いよ。大好きだよっ!」
──はぁ、はぁっ。
心なしか、頼子の吐息も少し荒い。
──ぎゅうう♪
手を胸の前で縛られたままで、
リリカの後ろからより強く抱きすくめる。
「あっ……」
──ぽよん。
柔らかな乳房を筆頭に、
頼子のカラダの前面ほぼ全てに触れられ、羽根が、背中が圧迫された。
ぴたりとくっついたまま、頼子が上下に動いて、カラダを擦り付けてくる。
──にゅるん。にゅるにゅるにゅるん。
「ああぁっ……!」
(ヤバ、マジで気持ちいい……)
泡を介してべったり密着する頼子の肌が、
心地よい感触と温度をリリカに与えた。
──ぬるぬる~。べた、べたべたべたぁぁ。……にゅるにゅるん。
「あっ、ああぅん……ん、うううん……ああ、あああ……」
リリカが動けないのをいい事に、ひたすら執拗に肌を擦り合わせる。
「あっ、あうぅぅん……ヨリコ……ヨリコぉ…」
目だけで後ろの頼子を見やりながら、切なげな声を漏らすと、
──ちゅ。
「ふふっ」
気持ち良さそうな顔で、頬にキスをされた。
「あっ……」
こんなに意地悪をされているのに、
キスだけで一瞬、あっさりと満たされてしまう。
そんな自分の心が、リリカはこの時ちょっとだけ悔しかった。
「ね、リリカ……ココ、触って欲しい?」
──ちゅぷっ。
「あひっ!」
蜜壺に、人差し指だけを挿入する。
(……来たっ!)
待ちわびていた瞬間が、ようやく訪れた。
(……早くっ、早くっ!)
心の中でわめき立てる。
指はそのまま膣内でぐるぅりと、かなりのスローモーションで円を描き始めた。
──ぐちゅり……ぐちゅり……じゅぷ………じゅぷ。
「くあぁっ!!んぅっ!……あっ!!……あんっ!!」
(うあああ、気持ちいい!めっちゃくちゃ気持ちいいよぅ)
頼子の動きに、先ほどまでのスピードや力強さはほとんど無い。
しかしそれでもリリカには、
指でひと撫でされる毎の快感が、段違いに感じられた。
ほんの少し動かすだけでも、水音がぷちゅり、ぷちゅりと聞こえる。
──ぐちゅ……じゅぷん。くち、くちぃっ。
「ああっ!あんっ!あんっ!ああ、あああああっ!」
(気持ちいいっ!すっごい気持ちいいっ!
……ヨリコ、もっと……もっとぉ!)
☆
──ちゅぽん。
そこまでで、頼子は指をすぐに引き抜いた。
「ふああああんっ………
……え?」
「……はぁい、それじゃあシャワー流すよ?」
一瞬、言葉の意味がわからなかった。
頼子がリリカの身体から、パッと離れる。
(え…………
……えええええええええっ!?)
頭の中に、自らの悲痛な叫びがこだまする。
秘裂の疼きは、一度は鎮まりかけたものの、
満足には程遠いところで、リリカはまたも取り残されてしまった。
中途半端な愛撫は、結果的に前より強い疼きだけを残し、
自由を奪われたリリカの神経を、ただただ悪戯に蝕み続ける──
──じん、じん。
「う……あっく……うあ」
手を縛られたまま、止まらぬ疼きに桃色の秘肉がヒクヒクと痙攣する。
──じんじん、じんじんじん。
ただそこに立っているだけでも、
淫らな不快感に襲われ、リリカは身悶えし続けた。
自分で慰めることも許されず、
必死に我慢してみたところで、
新たな疼きが、あとから延々と押し寄せるのみ……。
「あ……あ…あ………うああ…っ」
──リリカの心を、激しい絶望が襲う。
「う……うぅ……」
──じわぁっ。
左右の目尻に、一粒ずつ涙が浮かび上がる。
──また、焦らされた。
また、ずっと待たされるの…?
またずっと、ずっと我慢しないとダメなのっ!?
あんなに待ったのに、また、長い間……?
……ひどい……ひどいよ、ひどいよヨリコ!
……ヨリコひどいっ!!
触ってよ……早くいっぱい触って、いじってよ……!
やだ、もうやだ……やだよぉ!!
………我慢するの……もうやだ……
「う……ぅぅぅ……うぐっ、ぐすっ。
ぐすっ、えっぐ、ひぐっ……ううう、うあああああん!」
2度の残酷な仕打ちに、リリカがとうとう泣き出してしまった。
──ドキィッ!!
それを見た瞬間に、頼子の心臓が飛び跳ねる。
こんな風に泣きわめくリリカなど、今まで見たことが無い。
(わわわ、ちょっとやりすぎたかな……)
いじめるという趣旨からは確かに外れていないのかもしれないが、
正直ここでこんなに泣かれるとは思わなかった。
(……でも)
☆
「ひっぐ!ぐす、ぐすん……うああっ、ああっ、うわああん!!」
リリカの泣き顔を、思わずじっと見つめる。
──ドクン!
(でも、可愛い……泣いてるリリカ……かわいい)
──ドクン!ドクン!ドクン!
(リリカ……)
流れ続ける涙を見ているうちに、2つの感情が湧きあがる。
──リリカを慰めてあげたい。泣き止ませてあげたい。
──もっと、いじめてみたい。もっと……もっと泣かせてみたい。
相反するそれらのルーツは、同じ。
──リリカが好きだから。
──リリカを可愛いと思うから。
だから慰めたくなって、だから、同時にいじめたくなる……
──ぶるぶるぶるっ!
ぐちゃぐちゃの感情を必死に振り払い、
頼子はシャワーの栓を捻った。
──シャーーー。
リリカの正面に回り、その身体を流れ出るお湯で流していく。
「う…ぐすっ……う、ふあううあ……あっ、あひっ……えっぐ…あはん、うあああっ…」
嗚咽に混じって、小さく喘ぐような声が、その口から漏れ聞こえていた。
昂ぶりきったカラダは、最早シャワーの水圧にさえ反応してしまう。
(うああ、やばい……アタシ、やばいよぅ)
──シャーーー。
やがて間もなく、リリカを包んでいた泡は全て流れ去り、
健康的な可愛らしい裸体が、再び頼子の視界に晒された。
泣き出す前の事だが、頼子が少しだけ、シャワーの温度と勢いの強さを
こっそり上げていたのに、リリカは気付かない。
(どうして今日は、こんなに頭が回るんだろう?)
──きゅっ。
シャワーを止めて、ふと、頼子はそんな自問をした。
(私って、やっぱりヘンなのかな。エッチな事ばかり頭が働くなんて)
「……ぐすっ、ひっぐ。ヨリコ、ヨリコぉ……ぐすっ。えっぐ。」
そばで聞こえるリリカの嗚咽が、少し大きくなる。
(ううん、今はそんなことより……)
──なでなでなで。
手を縛られて動けないリリカの頭を、優しく撫でた。
「ゴメンね、リリカ。ちょっといじめすぎちゃったね……」
「うぐっ、ヨリコ、触って……触ってよぉ!…ひっぐ。」
なりふり構わず、懇願した。
「うん、触ってあげる。
ちゃんと触ってあげるから。泣かないで?リリカ」
──なでなで、なでなでなで。
「ごめんね?ちゃんと……ちゃんと気持ちよくしてあげるから。
だから泣かないで、お願いっ。ね?」
「……ぐすっ……うん。ふえっ、ひぐ……わかっ、た、ぐすっ」
わかったと言ったところで、すぐに泣き止めるわけでもない。
頼子はさすがに、焦らすのはもうやめておこうと思った。
☆
髪を撫でながら、涙で腫れたリリカの目をじっと見つめる。
「……ヨリコ?」
「リリカ、ねっ、キスしよう?」
言って返事も待たず、唇を重ねた。
──ちゅ。ちゅう。
「ん……ん……あむ……ん」
「ん……んむ、んっ……んむあっ」
ゆるやかに。
いたわるように。
唇を唇で、優しく撫でるように。
──ちゅ。ちゅぱ。ちゅう……ちゅっ。ちゅ……ちゅ。
──なでなで、なでなでなでなで。
しばらくして、涙がようやく収まっていった。
リリカの手首に触れる。
「えっ?」
少しずつ、タオルの結び目をほどき始めた。
──きゅっ、するする。
「……ヨリコ?」
──ちゅ。
「んむ」
ほどく途中で何かを言いかけたリリカの口を、自分の口で塞ぐ。
──する、するするっ。
タオルを完全にほどき、リリカの手が久しぶりの自由を得た。
「リリカ……手、後ろに回して?」
「えっ?……う、うん……」
──こくり。
頷いて、言われた通りにする。
「ありがとう」
頼子がリリカの後ろに回りこみ、2本の腕を掴んだ。
(あっ……)
掴んだまま動かして、背中側のある位置で止める。
「……じっとしててね?」
口調は、どこまでも優しい。
──こくり。
恐る恐る、リリカが再び頷く。
そのまま数秒が立ち……
「あっ……」
やがて再び、手首に布を巻きつけられる感触。
背後で、頼子がタオルの両端を引っ張った。
──きゅっ。
(……ああっ!)
リリカの背中で、バツの字を描くように固定された2本の手。
その手首が交わるところを、きつく縛られる。
(ああ……ヤバいよぅ……アタシ、アタシまた……)
再び拘束されるのだと理解した瞬間に、心が大きく加速していった。
──ぎゅっ!
──ぎゅっぎゅっ!
「あっ……あああっ……」
──ドクン!
──ドクン!
──ドクン!
高鳴る胸は、もはや手の施しようが無い──
>>05